不眠へ立ち向かう 第2回
不眠の悩みを考える
上田 均:精神科医 もりおかこころのクリニック
睡眠薬を追加する前に
病気の初めや重い時は、病気の症状としての不眠があるが、回復期
になると不眠に対する過剰な恐れや睡眠・睡眠薬への誤解がもとで、
眠れているのに眠れていないと錯覚したり、間違った薬の飲み方をして
却って眠れないという人が多いのです。眠れないからといって薬を増や
すのでなく、生活様式を見直したり、新たに実践していただいた例を、
あげてみます。
適切な睡眠時間とは
1日7時間眠れれば気分も爽快ですが、多くの人は毎日6時間も眠れば
上出来で、しかも夜何回も目が覚めることが多く、眠った気がしないとい
う人がほとんどではないでしょうか?
日中しっかり覚醒して過ごせるかが睡眠充足のめやすとして、睡眠時間
自体にこだわらないことが重要です。日中の眠気がひどかったり、平日
と比べ週末3時間以上長く眠らないといられないようなら睡眠不足と判断
します。
早く寝すぎていませんか?
翌朝早く起きなければならないとき、早寝をするのは一般によく行われて
います。しかし、ある程度起きていて自然に眠くならなければ睡眠薬もき
きません。
いつも眠りにつく時刻の2〜4時間前は1日の中でもっとも寝つきにくいと
いわれています。「寝つきが悪い、夜中に目が醒める」と言う人は、早寝
に気をつけてください。
遅くまでねていませんか?
夜なかなか寝つけず、朝になってようやく眠くなり、昼過ぎまで寝てしまう
という人は多いとおもいます。昼夜逆転が起こるのです。
昼夜逆転を直すには、前の晩、あまりよく眠れなくても、朝はやくに決ま
った時間起きるようにすれば、夜も決まった時間に眠れる様になります。
日中横になっていませんか?
入院中ベットにずっと横になっているだけで、夜間の睡眠の妨げになって
います。ベットが眠る場所でないという悪い条件づけが起こります。
眠れないのを過剰に恐れていませんか?
いつも夕方早い時間から眠れるかどうか心配しています。そして、心配の
あまりいつも眠れません。過度のこだわりをもつと却って緊張して、不眠
の原因となります。寝付けない時は寝室から出るとよいのです。
日中眠くなる薬を服用していませんか?
統合失調症の薬の大部分は夜1回の服用が可能です。また、催眠効果を
持つものも多くあります。1日3〜4回も薬を飲んでるのなら、夜1回又は
多く飲むとよいと思います。
しかし、抗精神病薬が多すぎると副作用として落ち着かなくなり、眠れなく
なります。
睡眠薬に対する誤解はありませんか?
夕食後7時前には寝てしまい夜中12時におき、睡眠薬の頓服を飲むが、
朝まで眠れないのは、睡眠が足りているからです。
睡眠薬は必ず寝れる薬ではありません。睡眠補助薬なのです。
毎日飲んでいると、眠れない日が必ずあります。また急にやめると、却って
服用前より眠れなくなります。もともと脳に備わっている眠る機能がさぼっ
ている為です。急には働きません。
運動・入浴・夜食について
睡眠には体の適度な疲労が必要です。軽く汗ばむ程度の水泳・30分程度
の散歩・ランニング・体操・ストレッチなどです。ただし眠る直前の運動は
却って入眠を妨げます。風呂も同様です。
夜食の食べすぎも質の悪い睡眠となります。空腹は、消化のよい牛乳又
は、ヨーグルトなどを少量とるとよいのです。
夢・悪夢について
夢の内容をよくすることはできないが、薬で夢をへらすことができます。
抗精神病薬を少量追加して、悪夢がへっていくのです。熟睡感が得られ
ない、悪夢をみる人は、主治医に相談するとよいです。
不眠は病気再発の前触れ?
不眠が病気再発の前触れの人は多いようです。睡眠薬では再発予防は
できませんが、他の薬でできます。早めに主治医に相談しましょう。
こんなに眠れないといつか死んでしまう?
不眠で死ぬことはないようです。
実験によると断眠の最高記録は11日間だそうです。11日間にはうつ
気分や被害妄想、幻視、記憶力・集中力・思考力の低下がみられたが、
身体機能には問題はなく、その後14時間45分眠り、目覚めた後は全て
正常にもどっていたそうです。体や心にダメージを与えることはないよう
です。
睡眠薬を追加する前いろいろと考えることがおおいにあるようです。
読者の質問・体験に答えて
睡眠薬が多い
飲んでいる睡眠薬が多すぎる場合、「減らすのがすごくたいへん」と聞くが
・・・。
答え:睡眠薬は依存性がありますが、一気にやめると離脱症状群(不安・
不眠・ いらいら)が起こる可能性があります。医師の指導のもとで
ゆっくり上手に減量していきましょう。
睡眠薬をやめて
眠れなくて睡眠薬を追加して、余計眠れなくなりました。原因は睡眠薬に
あると思いやめました。そして、小説を書くことにしたのです。3時間は没頭
します。今では、1日2個くらい用事があれば眠れる体になりました。
答え:よくがんばられましたね。 睡眠薬のやめ方としては、2種類の方法
があります。1つは、3錠→2錠→1錠→0.5錠→0とやめる方法(せん減
法という)で、作用時間の短い睡眠薬をやめる時に適してます。もう1つ
は1日おき、2日おきと服用間隔をのばしていく方法(隔日法という)で、
作用時間の長い睡眠薬をやめる時に適してます。一般に、作用時間の
長い薬の方がやめやすく、長い方に置き換え、隔日法でやめていく方法
(置換法という)もあります。
少しずつ睡眠薬を減らす
無理をして、10年前、すごい不眠で2度目の入院をした。1日目の夜、3日
間は寝続ける薬を飲んでも、朝まで眠れなかった。退院して、母が粉薬を
1/2→1/3→1/4と減らし0になった。それでもベンザリン10mgを飲んでい
たが、1年前から10mg→5mg→2mgと減らし、今は0で寝ている。
答え:お手本の様なやめ方ですね。ただ、夜眠る時の薬が睡眠薬とは限ら
ないので必ず、主治医と相談して行ってください。
まとめ
いつか睡眠薬をやめたいと考えている人は多いと思います。病状が回復
して、心身のエネルギーが十分になってから、睡眠薬の減量にとりかかり
ましょう。やめようという気さえあれば、必ずやめれます。あせらずのんびり
主治医と2人3脚で取り組んでいきましょう。